きこりやの店頭では、お客様から問い合わせを受けることがよくありました。「お華を活けたいんだけど、穴が開いた雰囲気のいい丸太がない?」「これくらいの大きさで、ちょっと苔が生えた石を探しとるんじゃけど」。
お客様が山に求めているものは、木材だけじゃあないんだな。そんな気付きが、「森の花屋」というアイデアを思い付いたきっかけです。
2018年、未曽有の豪雨(西日本豪雨災害)がきこりやを襲いました。店も木材加工場も浸水。ボランティアさんや近所の方の助けを借りて片付けは1か月ほどで終わりましたが、その後、作品を置いていた離れが徐々に傾いていきました。傾いた離れは見るだけで心を締め付け、安全面からも解体せざるを得なくなりました。その建物は、知人の家に移築しています。
豪雨の痛手から徐々に立ち直っていたころ、再び店を襲ったのが新型コロナウイルスの影響です。営業自粛を余儀なくされ、地域を訪れる人もめっきりと減りました。コロナウイルスの影響はいまだ消えていません。しかし、澄んだ空気と豊かな緑を求めて町を訪れる人は大きく回復しつつあります。
逆境の中にあって、田舎ほど元気なところはありません。離れのあった場所を生かして山の魅力を発信する新たなスポットを生むことで、以前よりさらに活気のある町にしていきたい。そんな思いからkicorico立ち上げプロジェクトを本格的にスタートしました。