町のコト、森のコト

森の花屋「kicorico(きこりこ)」は、東広島市福富町にある木工店「きこりや」から生まれたお店です。きこりの店主はちっちゃなちっちゃな子どものころから、ブナの原生林が息づく鷹ノ巣山のふもとで、森とともに生きてきました。

町のこと

-About our town-
クロアゲハ

「こんにちはー、大根がようけえできたけん持ってきたよ」「ありゃあ、ありがとう。あんたんとこ玉ねぎあるん?」「ないんよ。もろうてもええ?」。

東広島市福富町は、広島県の真ん中近くにある小さな田舎町です。人口は約2300人と少ないけれど、人との繋がりが濃厚で、いつも町のどこかでそんなあったかい言葉が交わされています。

30年ほど前は本当にお店の少ないちょっとさみしいところでしたが、澄んだ空気や豊かな自然に囲まれた環境を求めて、IターンやUターンを考える人が増えました。そうした人たちの作ったこだわりの商品やサービスを提供するお店が集まり、1998年、「こだわりの郷ぐるーぷ」を立ち上げました。

そのころから、「福富ってちょっと面白いよね」「週末はちょっと福富にドライブに」と言ってくれる人が増えていったように思います。そうした様子を見て、地元で頑張ってきた人たちもぐるーぷの活動を応援してくれるようになりました。

2005年に福富町が東広島市に編入されてからもぐるーぷは活動を続けており、事業者同士で協力して情報発信をしたり、イベントを企画したりといった取り組みを行っています。kicorico を運営するきこりやは、ぐるーぷができたときからその一員として、福富町の魅力を発信し続けています。

森のコト

-About our forest-

福富町は東広島市で最も標高が高い「鷹ノ巣山(922.1m)」をはじめ、カンノ木山(892.1m)や硫黄山(778.9m)といった高い山々が峰を連ねています。

鷹ノ巣山は1時間ほどで登頂できる山で、夜明けに合わせて登れば、眼下一面に広がる美しい雲海を眺めることができます(※天候による)。頂上近くにあるブナの群生は国有林で、「鷹ノ巣山ブナ植物群落保護林」として保護されてきました。その付近では春先に、貴重なユリ科の多年草「カタクリ」の可憐な花を見ることができます。

そんなブナの原生林から流れ出る清涼な水は「名水」との評価を受け、三原の蔵元で日本酒の仕込み水として用いられてきました。標高が高く夜間気温の低い土地は樹木をじっくりと時間をかけて育み、きめ細かく上質な木材を生み出します。

そんな福富町の豊かな山の恵みが林業と木材加工業を発展させ、きこりの店主を育てました。

山を強く育てるきこりのお手入れ

-Lumberjack's work-
植林スギ

山は手入れをしないと荒れてしまい、決して質の良い木材が育ちません。下草やひこばえ(あまり大きく育たない木の苗)を刈って日当たりと空気の通りを良くすることで、木の成長を促します。

植林する際、木によって成長バランスが崩れると根の張り方が偏り、大雨で斜面が崩れる原因となることがあります。

きこりの店主が手入れをする山は、まず木と下草を刈り取り、すぐには苗を植えません。しっかりと土壌に日光を当ててそのまま10年ほど放置し、自然に育った苗の中から、良いものを選んで大きく育てます。そうして育てた山は根張りに偏りがないため雨にも強く、2018年の西日本豪雨災害でも崩れることはありませんでした。